デモ弾圧非難声明、各国の思惑

で、その国連安保理事会のビルマ情勢に関する会合。

安保理審議では、米国のハリルザド国連大使は「中国が影響力を行使すべきだ」と主張したうえで、「軍事政権が適切な措置をとらなければ、米国は安保理に制裁決議を提案する用意がある」と述べ、武器禁輸措置などを具体例として挙げた。しかし、同大使は最初の段階として、軍事政権を非難する議長声明をとりまとめる案を支持すると述べた。英国も議長声明のとりまとめが必要と主張した。
一方、中国の王光亜大使は「圧力は不信や衝突につながり、問題解決にならない。外部からの介入は事態を悪化させる」と国連がミャンマーに対し圧力をかけ過ぎるべきでないと主張した。

外交筋によると、中ロはガンバリ氏の仲介による国民和解に向けた国連の政治的支援を支持する内容にとどめるべきだとの立場。軍政への「非難」や制裁の可能性を暗示した表現をめぐり、米欧と鋭く対立しそうだ。

英国は情勢への懸念を示す安保理議長声明の発出が妥当と指摘。米国も同調し、「ミャンマーが適切な方向に進まなければ、制裁を盛り込んだ決議案を提出する用意がある」と警告した。
これに対し中国は「圧力はミャンマーと事務総長間の対話を失う結果になりかねない。安保理は慎重な対応をとるべきだ」とこうした動きを牽制(けんせい)した。
ミャンマー問題をめぐっては1年ほど前から「組織的な人権侵害は脅威の前兆」と予防外交の観点から安保理の積極的な介入をすすめてきた米欧と、安保理が人権問題を扱う前例を作りたくない中国、ロシアのせめぎ合いが続いてきた。 
米欧は今年1月、ミャンマーの人権状況に懸念を示す決議案を安保理に提出したが、中露両国はともに拒否権を行使して採択を阻止した。

いわゆる「北風」強硬策を行おうとする欧米諸国と「太陽」政策で軍事政権を懐柔しようとするロシアと中国のせめぎ合い。
一方でビルマもその一員であるASEAN諸国はこれまでの対ビルマ外交を変えようとしている。

ミャンマーはこの数年、高まる国際社会の批判の中で、後ろ盾となってくれる中国との関係を急速に強化した。ASEANとしては軍事政権に強い民主化要求を突きつけることでミャンマーを孤立化させ、さらなる中国への接近を招くことへの警戒感が強く、軍事政権への強硬姿勢を取ることをためらわせてきた。
しかし、8年後の共同体創設を目指すうえで、独裁・強権政治を続けるミャンマーを抱えることは、国際社会における信用を保つうえでも困難だ。ASEANミャンマーに対する本格的な民主化誘導策を迫られ、共同体計画自体を問われかねない厳しい試練を迎えている。

もともとASEANを構成する国々は国家が一党独裁である(だった)あるいは強権的な政策を実施している(していた)国がほとんどで、以前からビルマにおける軍事政権に対する非難には消極的だった。しかしここにきて、そうもいかなくなった、ということ。これもビルマ民主化を望む、というよりも自国、ASEAN諸国の利益を優先するという事だろう。