ビルマ人の政治亡命者について。

id:nofrillsさんがブログtnfuk [today's news from uk+]で拙稿「ミャンマー人 相次ぐ難民認定破棄」を取り上げていただいた。ありがとうございます。

旅券取得根拠に「政治犯」否定

 こうした二つの不可解な高裁判決では、いずれもその根拠として、九〇年代に国連人権委員会ミャンマー担当特別報告者を務めた経験を持つ中央大学法科大学院の横田洋三教授の陳述書を採用している。

 昨年四月にまとめられた横田陳述書には「ミャンマーでは、政府が危険と考える(したがって迫害のおそれのある)政治犯に対しては、旅券は発行されない」と記され、東京高裁はそこから正規の旅券を取得できるのなら、迫害の危険性はない―と類推し、いずれの判決でも難民性を否定した。

 だが、実はこの横田陳述書には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチから「実態に即しておらず、ひどい内容だ」との批判が以前から寄せられていた。

これについて。

しかしこれ、英国がイラン人の難民申請を却下した根拠も似たようなものだが(大雑把には、イランでは同性愛者の迫害はない、という報告書がイミグレ・オフィサーの判断基準として採用されている)、日本での横田陳述書のほうが無茶苦茶度は高い。だって普通に考えても、「泳がせておく」ケースもあるだろうし、「実は知り合いの息子だから温情でパスポート発給」というようなケース(オスカー・シンドラー杉原千畝といった人たちの先例もある)もあるだろうし、カネで動く腐敗した役人だっているだろう(映画『ホテル・ルワンダ』にも出てきたよね、そういうのが)、つまりこの陳述書には想定されうる「例外」が多すぎる、と考えられるのだ。私の頭でも。裁判官が考えられないとは私には信じられない

確かにビルマではカネでパスポートが買える。役人へ賄賂が効くということなんだけれども、これは裕福な親が子供のビルマでの将来に悲観して海外で生活させるためにパスポートを賄賂で買うということもあるが、それよりも弾圧や拷問から逃れようと海外に行きたいと思っている反政府的な学生や活動家に対しては、簡単に出国を認めている。そのかわりに帰国を認めないというやり方だ。アウンサンスーチーの英国人の夫が癌で余命わずかと分かった時、当時ビルマにいたスーチーに会いたいとビルマ政府にヴィザ申請したが認められなかった。その時の政府の言い分は「夫に会いたいのなら、スーチーの方が英国にいる夫に会いにいくべきだ」というもの。それを口実に一度スーチーが出国したら二度と帰国を認めないつもりであったのだが、彼女はそのことがわかっており、民主化運動の指導者としての使命を優先させるためについに夫の死に目にはあえなかった。このようにビルマ軍事政権は反政府勢力、民主活動家などに対しては「どうぞ海外でお好きなことをおやりなさい。ただし国内では痛い目にあわせてやる」という方針なのだ。だから「ミャンマーでは、政府が危険と考える(したがって迫害のおそれのある)政治犯に対しては、旅券は発行されない」などということは、ビルマではあり得ないのである。