対ミャンマー外交 日本政府は倫理面で政策主導を


国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア・アドヴォカシー・ディレクター、ソフィー・リチャードソン氏の論説の抜粋。


「対ミャンマー外交 日本政府は倫理面で政策主導を」
朝日新聞、2007年10月17日)

今回、世界の眼前で丸腰の人々が撃たれ、殴られ、殺された。何百人もの僧侶が連れ去られ、活動家が逮捕されたが、この弾圧に対する日本政府の対応は残念だった。軍事政権の武力行使が明白になってから発表した談話はたった3行。「冷静な対応」を求める当たり障りないものだった。

一方、東南アジア諸国連合ASEAN)は「嫌悪感」を表明し、米国は新たな制裁を発表。欧州連合も、国連安保理に「緊急の議論と制裁を含む更なる措置の検討」を求めた。

いつもなら、日本はこうした民主主義国と足並みをそろえるが、今回はあいまいな批判に終止する中国やロシアと対応が似ていた。

長井さんの殺害後でさえ、政府の姿勢は明確さを欠いた。福田首相は「いきなり制裁するのではなく、各国と相談しながらやっていく」とするにとどめた。
政府は3日、ようやく援助の削減を発表したが、遅すぎた感が否めない。

軍政は、経済をどん底に陥れ、表現の自由を抹殺し、拷問を常用し、非ビルマ民族に無数の戦争犯罪を繰り返し、反政府勢力との対話にも応じない。日本政府が、日本人の死という事態に至る前に、手を打てなかったのが残念だ。

これは、力強さに欠けた今の日本外交の典型とも言える。多額の援助で相手国との友好関係を築いてきた日本だが、もっと気前よく無条件にお金をばらまく中国に勝てなくなっている。

今こそ、軍政の幹部を標的に制裁を科し、経済的・政治的圧力をかける諸外国と協調すべきだ。長井さんや僧侶たちの殺害といった人権侵害への国際的組織による調査を求めるべきだ。

リチャードソン氏が書いているような日本のどっちつがずの外交手法というのは、完全に時代遅れ。そしてカネさえ出せば友好関係が結べるというのも、もう幻想になってしまっている。もうそろそろ目を覚ましいて(それでも遅いぐらいだが)、自分の立ち位置というのを世界に示す時が来たのではないか。